そもそも請負契約ってどんな契約?
本事件は雇用契約が存するか否かが大きな争点となっている事は、他の記事でも記してきた通りだ。繰り返しになるが、行政への申告から一貫して、配送業務とは別個の契約であり、配送業務は請負契約だと自ら主張してきている。
だが、その配送業務自体も、実態は請負契約では無い可能性を残しているのだ。
まず、請負契約とは何か。条文から見てみよう。
民法(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
この事にも争いは無い。つまり仕事の結果に対して対価が生ずる契約だって事で、一般的には物販が判りやすいのだろうか、形有るものを造る。または加工するような契約で、職人と呼ばれるような職種が基本となっているはずだ。しかし、時代は移り変わり、物では無く役務、つまりはサービスを仕事の結果とする職種も増えてきている。配送業務もそうだが、清掃業務なども同様だと考えられるだろう。その場合の仕事の結果とは荷物を○個運んだ、だとか○部屋の清掃をした、または○台の車両を清掃した、そのような感じだろうか、いずれにしても○個、○部屋、○台の○に応じて対価が正比例する形式だ。
これが、○個の荷物を運んでも対価が変わらないだとか、○部屋清掃しようが、○台清掃しようが発生する対価が変わらない場合は請負とは言えなくなり、労働者だと判断され得る可能性が高くなってくる。
控訴審判決も述べる通り(14ページ5行目~)
請負であっても作業時間に応じた報酬を支払うことがあり得ないわけではなく・・・
と有るが、この言い回しからしても、かなり限定的、特別な場合にしか存在しないって事だ。例えば、芸人の場合なんかだと、この事例に当てはまるのでは無いかと考える。何人集客したとか、何人笑わせたでは無く、一本(予め合意に基づく一定の時間)いくらって契約だろう。しかし、それも厳密には時給というよりは、一定の時間単位のステージに対して対価が発生すると考えると、○ステージに応じて対価が正比例すると考える事が現実的では無いのだろうか。
つまり基本的な請負契約は、仕事の完成(商品の納品)を交換に対価が発生するもので、仕事の完成(商品の製作)の為に必要な時間は請け負う側の自由だ。5分で済む仕事を1時間かけようが、1日かけようが、報酬は変わらない。
真正な請負関係(多重請負)を検討する。
控訴審の言う、真正な順次請負関係とは、この事を言っているのだろうか。そもそも配送業務に関しても実態とは異なり、職業供給事業のおそれを持っているのだが、控訴審は真正な順次請負関係だと連呼してくる。
もっと言えば、配送業務がどんな契約だろうが、雇用契約に影響させる事に無理を感じないのだろうか。実態を客観的に評価する事を避けて、配送業務が存在する事から強引に『真正な』請負契約を作り出しているとしか考えられないのだ。
配送業務が合法な請負契約で無いこと~職業供給事業の疑いあり
つまりは真正では無いって事で、そもそもが違法な契約関係だと考えている。遵法精神の欠片も無い無知な古き良き昭和の時代の自己に都合の良いところだけにしがみついている馬鹿野郎だと言っておこう。
被控訴人の言い分を一審の本人調書から拾ってみよう。
被告代理人の尋問(被告本人調書3ページ下から4行目~)
例えば控訴人(原告)みたいに、訴外Bの指示を受けて配送業務に携わる人がいる場合に、そういうドライバーはどういう具体的な仕事をしているか、あなたの会社はいつどういう方法で認識するんですか。
被控訴人(被告)>>訴外Bさんの仕事の場合は、締めて、その原紙となるものが私の手元に来るまではうちの会社では把握できません。
今、原紙とおっしゃったのは、甲第10号証の原紙ですね。
>>はい。
だから、その甲第10号証の原紙が訴外Bから渡されるまで、どのドライバーがどういう指示を訴外Bから受けているか分からないという事ですか。
>>はい。
原告代理人の尋問(被告本人調書10ページ下から9行目~)
なぜそんな1時間当たり100円自動的に、黙っていても座っていてもお金が入ってくるんですか。
>>それは運送事業でも私どもは指示を出しておりませんので、現実にはそこでの15パーセイントの帳合料という考え方です。
被告代理人の再尋問(被告本人調書13ページ下から6行目~)
15パーセントという話が出て来ましたが、これは何ですか。
>>大体うちの我々の軽貨物運送事業の中で、そのくらいが帳合料として同業者の皆さん、取っておられるという、そういう業界のものです。
被控訴人の一審での本人調書中の各代理人とのやりとりの一部だが、どう感じるだろう。つまり被控訴人は運送事業においても、何も指示することはなく、帳合料との名目を業界の慣習なので当然に搾取していたと自認しているのではないのだろうか。
業界の慣習だろうと、何だろうと、自ら指示をせず、責任を負わず、帳合料だか何だか知らないが金員を搾取する事は労働者供給事業に当たるのではないのか。
職安法(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
本事件関係者の契約関係は真正の請負契約などでは無い。
真正な順次請負関係ならば、訴外Bの請負人になる被控訴人が、被控訴人自らの責任と能力によって、ドライバーと運送契約を結ばなければならないのではないのだろうか。
大阪高裁控訴審判決は、この部分も採用せずに、運送業務が真正な請負関係だと宣うのだ。そして、その謝った思考の元に労働者だと認定した控訴人の雇用契約の相手方を特定しようとする。
仮に本事件において、運送業務と倉庫業務の契約が密接に関係し影響するものだとしても前提となるべき事実にとんでもない間違いを犯しているのだ。
訴外B代表者の尋問が採用されていない事については以前に述べた。
控訴審判決が擁護したがる、被控訴人の尋問にすら耳を傾けない。持論を誇示するだけの為に、棄却の結論を得たいがだけの為のご都合主義であり、お話しにならない醜態だとしか考えられない。