真正な順次請負の6/7は無意味~嘘も6回言えば真実になる?

控訴審判決は執拗に「真正な順次請負関係」に拘ってくる。

控訴審判決の中で「順次請負関係」、「真正な請負契約」、「真正な順次請負関係」などが、同じ意味を持つと考えると全部で7カ所に登場する。毎回述べているようにも思えてきたが、本事件は配送業務とは別個の契約が雇用契約であるとの主張を行政から一貫して行ってきた。少なくとも、行政は、ここまで請負契約と結びつけなかったし、拘りもしていない。

しかし大阪高裁控訴審判決は、繰り返し順次請負に拘ってくる。順を追って、一つずつ見ていこう。

1)配送業務が請負契約であることの確認

控訴人が平成24年12月頃被控訴人との間で締結した本件配送業務請負契約は、倉庫を保有する訴外Aから訴外Bが配送業務を請け負い、これを被控訴人が下請けしてさらに控訴人に請け負わせるものであったところ、その業務内容は、控訴人が訴外Aの倉庫において訴外Bらの従業員の指示に従い、自らが所有する車両を使用して配送を行うものであった。上記業務内容に照らすと、本件配送業務請負契約が請負を仮装した労働者へ件に当たるものでは無い事が明らかであって、真正な請負契約であると認められるから、控訴人が本件配送業務請負契約のもとにおいて被控訴人との雇用する労働者に当たると解することはできず、本件配送業務請負契約から直ちに控訴人と被控訴人との間の雇用契約の成立を認めることができないことは明らかである。

(11ページの12行目イ(ア)~)

配送業務が請負契約だとのことの確認だと思えるが、実態は前回の記事の通り「真正」な請負契約などでは無い事は証拠からも明らかだ。

根本的に真正の順次請負関係など成立してない
そもそも請負契約ってどんな契約? 本事件は雇用契約が存するか否かが大きな争点となっている事は、他の記事でも記してきた通りだ。繰り返しになる...

2)訴外Bとの雇用契約は妨げられている

他方、前記ア認定のとおり、控訴人と被控訴人との本件配送業務請負契約が真正な請負契約であることに照らすと、控訴人と訴外Bらが別途雇用契約を締結することが妨げられるものではなく(したがって、被控訴人従業員Kがこれに異論を挟まないのは当然である。)

(12ページ10行目~)

これに関しては、別記事に記したので多くは述べないが、「真正」な請負契約だと誇張する必要は一切無いだろう。

少しだけ付け足せば、被控訴人との請負契約があろうと、余所で何をしようと全くの自由なのは請負契約の基本じゃないのか、わざわざ文字数を稼ぐ必要は全く無い。

3)請負契約を前提の雇用契約など主張していない

そうすると、この点に照らしても、前記アのとおり倉庫作業において控訴人が労働基準法及び労働契約法上の労働者であると認められ、かつ、訴外A、訴外B、被控訴人、控訴人という順次請負関係が存在するからといって、単純に控訴人と被控訴人と雇用契約を締結したのが被控訴人であると認定することはできない。

(12ページ下から5行目~)

これも前項目と同様で、何も雇用契約を検討するのに順次請負関係を持ち出す必要が解らない。そもそも順次請負関係ですらなく、職業供給事業の疑いさえある関係を持ち出すことは話しをこじれさせる意外に、どのような目的があるのだろう。

4)大阪高裁の暴走が始まる

また、控訴人が倉庫作業の初月分として訴外Bの支給した報酬額の不満を述べたことを受けて、被控訴人が訴外Bに打診し、訴外Bの提示により倉庫作業1時間あたりの報酬額が1100円とされた経緯も、訴外B、被控訴人、控訴人という順次請負関係にあるとの被控訴人の認識と矛盾するものではなく、かえって、倉庫作業に係る作業報酬額を決定したのが被控訴人ではなく訴外Bである点は、雇用契約の雇用者であれば発注者と無関係に独自に定めることのできる賃金の決定権が被控訴人に属していなかったことを示す事情といえるのであい、被控訴人が上記報酬額相当額を訴外Bから受領して同額から帳合料を控除して控訴人に交付していたという事情を考慮しても、この点を控訴人と被控訴人間の雇用契約の成立を認めるべき事情ということはできない。

(16ページ12行目~)

これに関しては、本当に何を言ってるのか、わけが解らない。被控訴人がどのような認識をしていようとも客観的に労働者であるか否かを判断するのが裁判所の役割じゃないのだろうか。被控訴人が「認識してなかった」から当然だとの見解なのだろうか。そうならば裁判所なんて必要無いだろう。また、帳合料が当然のもので、さも適法な利益のような言い回しをしているが、前回の記事で述べたように、それ自体が、それこそ、真正の請負契約で有ったとしても違法じゃないのだろうか。はたまた控訴審判決が自ら認めた労働者の賃金を搾取する事が認められるとでも言うのだろうか。労基法11条の賃金の定義はどこへ行ったのだろう、労働者に支払われるものは、その名称の如何を問わず賃金では無かったのだろうか。

労基法 第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

5)6)請負関係があるから雇用契約を認めない。

雇用契約も契約であるから、基本的に雇用者と被用者との間で契約を締結する意思(効果意思)が必要であるところ、元請人、下請人、孫請人と順次、請負契約が成立している状況の下で、孫請人の実態が労働者であるのに下請人との間で請負契約を仮装していたり、下請人において孫請人が元請先で労働者として就労することを予定して孫請人を元請先に差し向けるといういわゆる偽装請負のように下請人が孫請人の雇用者であることを事実上の前提としている場合は別論として、真正な順次請負関係である場合に孫請人が下請人を介することなく元請人のもとで孫請業務とは異なる別個の作業に労働者として重視した場合において、下請人の意思とは無関係に、下請人と孫請人との間の雇用契約の成立を認めうることは、上記法令の趣旨や労働者の保護を考慮してもなお不当で有ることが明らかである。

(18ページ3行目~)

この一文で2回も登場する。一つ目は「順次、請負契約」で、二つ目は「真正な順次請負関係」だ。

再三、述べているが、誰も配送業務の請負契約を基準に雇用契約の成立なんて主張していない。それどころか、「真正」な順次請負関係が実態として間違っている可能性があることは指摘したとおりだし、請負関係から雇用契約を推定するなんて筋書きはどこから来るのだろうか。もちろん被控訴人も請負契約が有ったから雇用契約だとの主張は見られない。あくまでも雇用契約は成立せずに請負契約だと主張してたのではないのか。

また引用部分の前半に「孫請人の実態が労働者であるのに下請け人との間で請負契約を仮装していたり、下請人において孫請人が元請け先で労働者と就労する事を予定して孫請人を元請先に差し向けるといわゆる偽装請負のように下請人が孫請け人の雇用者であることを事実上の前提としている場合は別論として、・・・」とあるが、それが事実じゃないのか。

孫請人、つまり控訴人が労働者だと認定したのは、この控訴審判決ではなかったのか。
下請人、つまりは被控訴人は帳合料との適法ではない(おそれのある)金員を搾取する為に、自らは指示を与えず、仕事の内容を把握しようともせず、元請先の訴外Bに孫請人らを差し向けていると供述しているではないのか。

根本的に真正の順次請負関係など成立してない
そもそも請負契約ってどんな契約? 本事件は雇用契約が存するか否かが大きな争点となっている事は、他の記事でも記してきた通りだ。繰り返しになる...

それが別論となってしまう流れは行き先を見失っているとしか考えられないのだ。

7)行政処分に口出す権限は無い

しかし、これらの諸判断は、もともと訴外A、訴外B、被控訴人、控訴人の関係が真正な順次請負関係であったことを適切に評価せず、被控訴人が当初から控訴人を倉庫作業に従事させるために訴外Bらのもとに派遣した事案と同様の見立ておしている点で失当であり、前記(ア)~(エ)において判示したことに照らして採用することはできない。

(18ページ3行目~)

もともと真正な順次請負関係ではなく、歪な請負関係だった事は気付きもしていないのだろうか。

また、控訴審判決も述べているが(17ページ7行目~)

(エ)なお、雇用契約は、当事者間の契約の形式にかかわらず成立を認めるべき場合があり、控訴人が倉庫作業に従事したことが、請負の形式をとった被控訴人による労働者派遣ととらえることができるか否かについて、さらに検討する。

「形式にかかわらず成立を認めるべき場合がある」のではなく、「如何なる形式であろうとも客観的な実態の評価により雇用契約を認めなければならない。」のでは、ないのだろうか。そうで無ければ労働者保護など実現するはずもないだろう。

とは言うものの、実態を鑑みて労働者性を判断すべきとの思考は一切無いようだ。当初からだろうが、振り返ってみようが、労働者は労働者である。当事者、多くは使用者側の遵法精神の低さから労働者を守る為の労働諸法令じゃないのか。

順次請負関係を軸にする事は不毛、失当だ。

見てきたように、大阪高裁控訴審判決は、あくまでも真正な順次請負関係に拘ってくる。しかし、そもそもが歪な請負関係であった事には気付こうともせず、全く別個の契約であろう雇用契約の前提とするために、強引に「真正」なとの表現を繰り返す。そして繰り返し、自らに言い聞かせているうちに、嘘が本当になってしまった幼児かと思える勢いで行政処分にまで断定して否定している。

配送業務と倉庫業務は独立した別個の契約であり、共に成立し共存しているのだとの判断が行政への申告から一貫した主張であり、行政もそれを支持してきた。

つまり請負関係を持ち出す事自体が失当であり、この記事で見てきた部分の全てが無駄で、攪乱・混乱させる目的じゃないかとさえ思えてしまっている。